LD LETTER

vol.14

2026.06  Daikin Amica Karuizawa

COEXISTENCE WITH NATURE

CULTURAL LANDSCAPE

設計者・施工者・事業者と土地が紡いだ協働の作品 Daikin Amica Karuizawa

光庭

光庭から⼿前に既存樹⽊のウラジロモミ、奥に本館を⾒る。既存樹⽊約2,300 本の外形や樹種を調査し、保全する配置計画とした。

Daikin Amica Karuizawaは、空調のグローバルリーディングカンパニー ダイキンの保養宿泊施設として、歴史的に由緒ある旧軽井沢地区に計画されました。計画地は、明治から昭和にかけて活躍した政治家・細川護立が1918年に別荘を構えた土地であり、川端康成の小説「高原」の舞台にもなった場所です。
敷地は高低差が約35mの斜面地と平坦地による多様な地形を有し、モミ並木やカツラ並木などの風格ある木々があります。恵まれた環境と歴史の資産を背景に、事業者から、土地の魅力を最大限に活かした空間の実現を求められました。

軽井沢を代表する景観、カツラ並木の保全・継承

四季折々の表情

位置図

Daikin Amica Karuizawa
所在地 長野県北佐久郡軽井沢町
主用途 保養宿泊施設
発注者 ダイキン工業株式会社
外構設計 株式会社ランドスケープデザイン、住友林業緑化株式会社
建築設計 KAJIMA DESIGN
土木設計 鹿島道路株式会社、アネスト企画
施工 鹿島建設株式会社、鹿島道路株式会社、住友林業緑化株式会社
敷地面積 約45,300m2
計画・設計期間 2017年9⽉~2022年3⽉
工期 2022年3月~2023年11月

配置図

既存樹木の評価

調査記録 2018.04.03、04.17

既存樹木保全の調整と景観検討

既存樹⽊や地形を点群データ化し3Dモデルと重ねた景観スタディ

無作為の作為

本プロジェクトのランドスケープのコンセプトは、「無作為の作為」です。恣意的な形態や造形を避け、魅力的な環境そのものが立ち現れる風景の創出を目指しました。コンセプト実現のため、まず、豊かな地形や樹木などを読み解き、「継承する/改変する」ものの整理に多くの時間を費やしました。建築や道路、庭の整備において、「周囲の環境といかに馴染むか」に注力し、現況を改変せざるをえない場所も造成の影響を最小限にするよう努めました。

樹木と土地の歴史を丹念に調べる

敷地全体の測量図と約2,300本の毎木調査をもとに既存の樹木1本1本を調べ、景観や歴史性などの観点から樹木の価値を評価し、 保全する樹木を選定しました。代表的な樹木は樹齢を調べて歴史的な価値を把握するとともに、根の伸張範囲を調査し、点群データや3Dモデルでのシュミレーション、現地での確認を重ねることで、建築・ランドスケープがひとつの風景として溶け込むことを追求しました。

三者と土地の魅力による協働作品

本プロジェクトで特筆すべきことは、事業者・設計者・施工者の濃密な関係です。本プロジェクトのために、事業者は、多様な職種から選抜されたメンバーから成るプロジェクトチームを結成しました。
計画から竣工に至るまでの6年間、三者は会議室での打合せだけでなく、ワークショップも実践するなど多角的な議論を重ねました。ワークショップは関係者全員が3チームに分かれ、ランドスケープの計画を設計者・施工者・管理者・来訪者等多様な視点から空間を検討し、提案を競いました。こうした議論の積み重ねにより、「敷地の持つ環境・歴史資産を最大限に活かすことが、本計画の独自性である」という認識が三者間で共有されていきます。時間をかけた協創には下図に示す環境・歴史資産の保全と活用の意思決定プロセスがありました。
三者がそれぞれの立場から土地に真摯に向き合い、土地の魅力を尊重して本作品が実現しました。

環境・歴史資産の保全と活用の意思決定プロセス

ダイニングから光庭を見る

無作為の作為を目指した計画・ディテール1 : 木漏れ日の庭

木漏れ日の庭は、来訪者がゆっくりとした時を過ごす「リビング」に面する庭で、エントランスホールから見える明るく開けた「光庭」と対比的に、木漏れ日と斜面に包まれた場所です。
元々、流れはなかった場所ですが、地形の細かな変化や斜面全体の流れを読み取り、整備することにより、あたかももともとあった流れであるような庭を実現しました。ここでも樹木を最大限に残すように計画すると同時に、自然で変化のある護岸にみえるように、5つの護岸タイプを設定しました。建築からの見え方に配慮して検証したイメージを職人との共通理解としながら現地で仕上げました。

地形や既存樹を丁寧に読み解き、あたかも元からそこに流れていたかのような風景をつくりだした

地域の浅間石を用いた水景

無作為の作為を目指した計画・ディテール2 : 別棟宿泊棟エリア

別棟宿泊棟エリアは、地形や植栽を読み込み場所の特性を把握した場所ごとに異なる意匠の宿泊棟が点在します。斜面の方角や樹林密度・植生の多様度を基礎資料として作成し、建築配置やテラスの向きに反映されました。各棟には幹線道路から分岐したアプローチ空間からアクセスします。ここでもいかに既存樹木を保全するかに取り組み、緻密な測量と調整を行った上で、場所ごとに詳細な地形図と樹木の保全計画を作成し、木々に包まれたシークエンス豊かな前庭空間を実現しました。

別棟宿泊棟アプローチ

※写真撮影: 阿野太一