LD LETTER

vol.9

2022.07  Hareza IKEBUKURO

COMMUNITY ENRICHMENT

VIBRANT DESIGN

SPECIAL FRAMEWORK

各敷地をシームレスに繋ぐ Hareza 池袋のランドスケープ

 豊島区が掲げる「国際アート・カルチャー都市構想」に基づく池袋駅周辺再開発プロジェクトの一環をなす官民連携の旧庁舎等跡地活用事業である。
 旧豊島区庁舎跡地のHareza Tower、旧公会堂跡地の東京建物Brillia HALL及び、としま区民センター、中池袋公園、さらに周辺区道整備の5つの事業からなる。
 各々は小さなオープンスペースであるものの、道路含めた各敷地の素材やアイテムを極力揃えることに加えて、Hareza Tower・東京建物Brillia HALL・としま区民センターの3棟を結ぶ「ブロードウェイ」による敷地横断的な大歩行空間、各敷地を一体とする広場状の空間構成、およびそれらのシームレスな境界創出によって、各々の小ささを感じさせないほどまとまったパブリックスペースの創出に成功している。

Hareza 池袋
所在地 東京都豊島区東池袋一丁目
A敷地: 18 番1 B敷地:19 番1 C敷地:20番10
中池袋公園:16番1
主用途 オフィス、シネマ、劇場、集会場、店舗、公民館、公園
事業主 AB敷地:東京建物株式会社、株式会社サンケイビル
C敷地・中池袋公園・区道:豊島区
景観設計 株式会社ランドスケープデザイン
建築設計 AB敷地:KAJIMA DESIGN C敷地:伊藤喜三郎建築研究所
施工 AB敷地:鹿島建設株式会社 C敷地:株式会社松尾工務店
区道:鹿島道路株式会社 中池袋公園:奥井建設株式会社

3つの道路境界(赤線)を消し去った「ブロードウェイ」(緑塗)公園、道路と民地によるヴォイドの形成(青点線)

「ブロードウェイ」平面図

3つの道路境界を消し去った「ブロードウェイ」

道路と3つの敷地の3棟の建築を結ぶ「ブロードウェイ」と名付けた象徴的な床面デザインは敷地を横断するだけでなく、道路の横断歩道とも幅を合わせることで敷地境界を感じさせないデザインとなっている。

「ブロードウェイ」から見たシネマプラザ

公園、道路と民地によるヴォイドの形成

自治体各課の理解を得て、中池袋公園を広場状に整備し、各敷地と道路を一体的に整備することで、国内では難しい敷地横断型の都市広場が実現している。

舗材、照明、ボラード等を統一し4敷地の一体感を創出

道路から街路へ 歩者共存(シェアドスペース)を目指した道路デザイン

中池袋公園から東京建物Brillia HALL・Hareza Towerまで一体的な空間が広がる

抽象模様によるハレの場

「国際アート・カルチャー都市構想」の一環として、Hareza池袋全体を8つの劇場空間として見立てた中の劇場のひとつとして改修したのが、パブリックスペースのコアとなる中池袋公園である。「広場」には従来の幾何学パターンではなく、造形作家(岡﨑乾二郎氏)によるデザインを全面に描くことによって都市のにぎわいの演出や、劇場空間としてのハレの場のアイコンとなっている。模様のエッジはきれいな曲線とせずに、ドローイング原画のかすれや跡切れを純粋に表現するために、ラフな石材エッジ加工によって、「手仕事」としての表現を意識している。

ラフな石材エッジ加工

改修前の写真

保存樹木によって成立した公園の広場化

 既存公園の改修に当たっては、周囲を取り囲んでいた植栽帯を撤去し、既存大径木や新植樹木の樹冠の下に広がる「広場」として,緑量を維持しながら、利用スペース、歩行スペースを拡大させることに腐心した。緑化条例等の面積与件上、新植の樹木だけでは葉張りが足りず、このような、開放感にあふれ、イベントなどにフレキシビリティの高いハードな広場と単独木のみという構成は実現できなかった。保存樹木の豊かな葉張りによって、はじめてこの「広場」は法的にも空間デザイン的にも成立しているといえる。

高低差を生かしベンチ、階段、植栽帯が一体となった基壇のデザイン

地形を処理する基壇のデザイン

Hareza Tower(A敷地)と東京建物Brillia HALL(B敷地)の間には商業施設が配置されている。
1m程度の敷地の高低差を生かし賑わいを創出するために、テラスとプロムナードをつなぐ階段、ベンチが一体となった彫刻的な植栽帯によって丁寧に基壇をデザインしている。

ランダムな列植

自然な植栽が生むセンスオブパーク

ハードな意匠と対比するように植栽計画は、中池袋公園との繋がりを強調するため、雑木林のような、自然な植栽を施した。ハードスケープに合わせた整然とした植栽ではなく、ピッチや位置を極力ずらした樹木の配置によって、重層的な空間をつくり、公園の中にいるような雰囲気を創出している。

※写真提供:※1阿野太一 ※2株式会社エスエス 島尾望